医師 求人は年々変化しています

 では、どのように抗インフルエンザ薬の濫用を避けたらいいのでしょうか。
もし新型インフルエンザを発病していれば、薬を使用しても構わないと思います。
WHOではハイリスク者や重症患者を優先するようにとの方針を出していますが、日本国内では発病している人が治療の適応と考えていいでしょう。
 それよりも問題となるのは、新型インフルエンザのわずかな疑いだけで薬を服用するという行為です。
たとえば、少し熱が出ているので心配だから服用するとか、周囲に患者が発生したので症状はないが念のため服用する。
そんな医療行為が日本ではしばしば行われてきました。
これは医者の側か注意すべき問題ですが、患者の側でも安易に薬を要求しないように心がけていただきたいと思います。
 ワクチン輸入への非難 もう一つはワクチンに関することです。
 日本の厚生労働省は二〇一○年三月までに一八〇〇万人分のワクチンを供給する予定にしています。
これだけの量をすべて日本国内のメーカーが製造する計画ですが、このワクチンの供給量は欧米諸国に比べるとかなり少なくなっています。
こうした状況から、二〇〇九年九月に厚生労働省は年度内の供給量を、六〇〇〇万人分近くまで増やす計画を発表しました。
すると四〇〇〇万人分以上が足りなくなりますが、この不足分を海外のメーカーから輸入する方針を出しています。
 ところが、海外のメーカーはすでに先進国からの予約を終了しており、今から受注するとなると途上国に供与する分にも影響を与えかねません。
これには国際社会から大きな非難を招くことになるでしょう。
「国内メーカーがある国は自給自足をすべきだ」と。
 ワクチンが流行を制圧するための切り札であることは間違いありません。
しかし、現在のウイルスの毒性を考えると、ただちに国民全員に接種すべきものではないようです。
しかも日本のように抗インフルエンザ薬が充分にある国では、ワクチンの量が完全ではなくても、薬とワクチンを上手に併用すれば当面の被害は回避することができるでしょう。
 その一方で、途上国は薬の備蓄もなく、ワクチンも充分にないという状況です。
ここは日本も、ワクチンについては国内メーカー分だけでがまんする。
そんな心意気が必要ではないでしょうか。
こうした私たちの「がまん」が途上国への国際支援になるのです。
 九月の時点で厚生労働省は、ワクチン輸入の方針をほぼ固めたようですが、その一部でも途上国に供与してあげたらいかがでしょうか。
自国民の健康も大切ですが、今は地球規模で健康を考える時代です。
環境問題と新型インフルエンザ新型インフルエンザの流行を私たちの視点で見ると健康問題になりますが、それを地球規模で眺めると環境問題であることが分かります。
 今回の新型インフルエンザ09の震源地は、第一章でもご紹介したようにメキシコ中部のLaGloria村と推定されています。
この村の近郊に大規模な養豚場かおり、そこから流行が拡大したとみられていますが、真偽のほどは定かではありません。
いずれにしても、この病気の原因である09型ウイルスが、豚の世界から人間の世界に蔓延して流行をおこしたことは確実なようです。
 さらに、今回の流行がおこる前、新型の有力候補にあがっていた鳥インフルエンザウイルス。
これも鳥の世界で流行するウイルスが、人間の世界に蔓延することを想定していました。
 こうした動物のウイルスが人間の世界に蔓延するというメカニズムは、動物と人間の世界が密に接触していることに由来するものです。
そして、このような接触が頻繁におきるようになった背景には、近年の急激な人口増加があります。
すなわち、人口増加の結果、人間が新しい上地を求めて動物の世界に立ち入る機会が多くなったのです。
こうして発生した感染症の代表格がエボラ出血熱やSARSでした。
それぞれアフリカ、中国と発生場所は違いますが、人間が動物の世界に立ち入ったために、動物の感染症が人間に蔓延する結果となりました。
 もう一つ、人口増加にともなっておこる現象として、食料確保のため、人間の世界で動物を大量に飼育するようになったことがあげられます。
つまり、人間の世界の中に動物の世界を人工的に作ったのです。
この結果として発生した感染症が新型インフルエンザです。
二〇世紀に発生したスペイン、アジア、香港の三つの新型インフルエンザも、家禽のウイルスが人間の世界に及んだことが原因でした。
そして、今回の新型は家畜である豚のウイルスが蔓延したものです。
 このように、人間と動物の世界の接触という観点から新型インフルエンザの流行を眺めてみると、その発生メカニズムがよく分かります。
また、それが人口増加にともなう環境問題としての位置づけであることも、ご理解いただけるでしょう。
 集団飼育でウイルスは強毒化した 食料を確保するための家畜の飼育は以前から行われていましたが、一九六〇年代からはさらに効率的な集団飼育という方法が導入されます。
 たとえば、ニワトリはもともと卵を産ませるために飼育されていた動物ですが、第二次大戦後は食肉としての需要が増大してきます。
それまでは庭先などで飼育していましたが、需要が仲びるにつれて狭い鶏舎の中で集団飼育する方法がとられるようになりました。
このような環境でニワトリを飼っていれば、感染症の蔓延は容易におこってきます。
また、その原因となるウイルスも変化をおこしやすくなり、毒性が強くなる危険性があります。
 こうして誕生したウイルスが鳥インフルエンザウイルスH5NI型です。
このウイルスはニワトリを一〇〇パーセント近く殺してしまうほど毒性が強いものですが、もともとは弱毒性でした。
それが集団飼育されているニワトリの間で流行を繰り返すうちに、毒性が増したようです。
このウイルスが一九九七年に香港で初めて人間に感染し、その後、新型インフルエンザをおこす第一候補にあがっていたのです。
 今回の豚の09型ウイルスは幸いにも毒性が弱いウイルスですが、やはり集団飼育された豚の間で流行を繰り返すうちに、人間に感染しやすくなる変化をおこしたものと考えられています。
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